三ノ沢岳(2846M)・宝剣岳(2931M) 8月18日(土) 晴のち曇  みれさん
梅雨明けしたと思ったら・・猛暑日の連続。身も心も疲れ果ててる私を、「どっか日帰りアルプスに連れてったろかぁー!」と、哀れんで救ってくれたのはみれさんである。今年は全然夏山らしいとこへ行けないでいる私にとって、その言葉はウソでも女神の囁きに聞こえた。最初は12日の予定だったが、私の都合で18日になった。相変わらず迷惑をかけて申し訳ない。

さて、行く日は決まったのだが行き先が全然決まらない。今年軟弱になっている私には、みれさん好みのハードな山は無理である。いくつかの候補はあったのだが、どれもこれもイマイチ。おまけに天気がちと心配となってきた。最終的に例えガスでも花があるという事で、中央アルプスの千畳敷からの三ノ沢岳に決まったのは出発する直前だった。(^^ゞ

三ノ沢岳は雑誌やネットでも数多く紹介され、以前にみれさんとも話題にした事がある。4年前に宝剣に上がった時、その美しい山容にしばし見惚れた事をはっきり覚えている。みれさんも、この界隈は冬しか来た事がないらしい(この辺がちょっと普通人と違う!?(^_^;))

今回はゆっくり仮眠してから登ろうと・・前夜の10時に敦賀を出る。高速はまだお盆休みが続いているのか・・こんな時間でもかなりの普通車が走っている。大垣~一宮間が20Kの渋滞の様子。「何でやねん!?」と思わず呟いてしまう。その割にはまあまあ順調に走れて駒ヶ根ICで下り、ゴミ箱が一切置いてない(ちょっと驚き)コンビニで食料を調達し、菅の台バスセンター前の駐車場に1時過ぎに着く。すでに駐車場には数十台の車が停まっている。これは信じてはいけないが、空は満天の星空である。「誰のおかげやぁー!?」と、みれさんは言いたそうだったが、これはすでに私の前では禁句になっている。都会?の敦賀の暑さがウソのように涼しい。みれさんはテントを張り、静かに?眠りにつく。
朝4時半、外がだんだん騒がしくなってくる。横の車の人の大きな話声に、「うるさいなぁー!マナーっていうのを知らんのかぁー!」と、みれさんがテントからもぞもぞと起きてくる。この方の起きてから30分ぐらいの間は機嫌が超悪いので、自分が可愛ければ安易に話しかけてはいけない。静かに時が経つのを待つのみである(苦笑)

駐車場は知らない間にかなりの車が入っている。ふとバス停の方を見ると、すでに何人かの人が並んでいる。えっ!?バスの始発は6時過ぎである。駐車場にいる人の多くも準備をしているようだ。別に慌てる行程ではないので遅れてもいいのだが、こういう光景を見るとついつい気持ちの余裕がなくなるのは貧乏人の証拠である。(^^ゞ 簡単に朝食を食べて準備に取り掛かる。

「こんな早朝から何で並ばなあかんのやぁー!」と・・呟いてみても現実は何も変わらない。並んでいる人の格好もまちまちである。大きなザックを担いだバリバリの人もいれば、手ぶらでジーパン姿、また小さな子供を連れた人もいる。これは中央アルプスを縦走する人もいれば、千畳敷を散策するだけの観光の人もいるからでここの特色なのだ。始発時間より早く臨時バスが動き出し、3台目のバスで約30分かかってロープウェイの駅があるしらび平へ!そんなに待つ事もなくロープウェイは、運賃を払った者全てを平等に約7分で標高2600Mの涼しい世界へと運んでくれる。何て極楽なんだろう。往復のバス代、ロープウェイ代は3800円と貧乏人には辛い金額だが、体験をしてみると病み付きになりそうである。(^^ゞ 

ガイドの若い女性は、飽きたような口調で簡単な説明をしてくれる。そりゃあ仕事とはいえ、毎日々何回も同じセリフの繰り返しだから当然だ!と・・ヘンなとこに同情したりもする。高度を上げるに従って、雲の上に浮ぶ南アルプスの山々が見えてきて皆から小さな歓声が上がる。
千畳敷の駅前は、早く着いた人達で賑わっている。見上げると、中央に青空に生える勇ましい宝剣岳!カールは濃い緑で覆われている。何だか懐かしい風景である。すでに乗越浄土に向って歩いている人達の姿も見える。宝剣岳をバックに記念撮影など・・思い思いにカメラを向ける人達。素晴らしい光景に皆さんの顔にも笑顔が溢れている。

正直言ってこんな青空に恵まれるとは思ってもいなかった。調子に乗ってくれると困るので言わないが、間違っても私の力ではない事は確かだ。(^^ゞ さすがに2600Mの世界は涼しくていい気持ちだ。靴の紐を締め直し、神社から左のルート・・極楽平へ向って歩き出す。道沿いにはミヤマアキノキリンソウやモミジカラマツ、ハクサンボウフウ、エゾシオガマ、ヨツバシオガマ、ウサギギクなどがポツポツ咲いている。色鮮やかな花はほぼ姿を消し、確実に秋に向っている気配を感じる。今年豊作のコバイケイソウも終りに近い。簡単に写真を撮りながら整備された階段状の道を登って行く。歩き始めでもあり、けっこう急で息が上がる。 
稜線上の極楽平に着くと、また素晴らしい景色が待ってくれていた。目の前には今から行くピラミダルな三ノ沢岳、左には空木岳などの中央アルプスの山々、振り返ると、南アルプスの山々に・・小さく富士山も見える。大袈裟に書いているように思うかもしれないが、景色は期待していなかった分だけ喜びは大きいのである。(^^ゞ

涼しい風は火照った体を一気に冷ましてくれる。景色を堪能した後、三ノ沢への分枝と向う。イワツメクサやタカネツメクサ、チシマギキョウ、コマウスユキソウなどが咲いている。チングルマはすでに羽毛状になっている。
南アルプスの山々
空木岳など
三ノ沢岳の分枝に着くと、すでに数人の人が休んでいる。目の前には後から登る険しい宝剣岳の姿。御嶽山や木曽駒ヶ岳なども見える。極楽平から僅かな距離なのだが、こんなに展望がいいとついつい足を止めて見入ってしまう。時間はたっぷりあるので別に慌てる必要は全然ない。滅多に来れないアルプス、思う存分堪能したい。
木曽駒ヶ岳など
御嶽山
分枝から三ノ沢岳に向って下って行く。アップダウンのある道で、小さなピークが最低2つはあるのが確認できる。すぐにハイマツ帯に入って行くのだが、道幅が少し狭いために枝がズボンやシャツに引っ掛かってしまう。

ピークの上には大岩が点在しており、そこからの眺めもすこぶる良い。1つ目のピークからさらに勿体無いぐらい大きく下る。分枝から山頂まで往復すると、累計標高差は800Mぐらいになるらしい。

主役の花はミヤマアキノキリンソウで、延々と道脇に咲いている。
岩の上り下りや、段差の高い箇所もあってなかなか険しい道である。2つ目のピークの岩上で小休憩。冷えたブドウが美味しい。振り返ると、宝剣の姿が遠くに見える。流れる雲を見ながら・・まったりと過す時間は格別である。

ピークからまた下ると、後はほぼ上りだけである。みれさんがピッチを上げて進む。やがて最後の急坂で、先程から見えていた30人ぐらいの団体さんに追い着く。どうもツアーの団体さんらしい。最後尾のサブリーダーらしき人が道を空けるように指示を皆さんに出してくれたが、この坂で30人を一気に抜くのは・・(^_^;)
普段はいつも控え目な私だが、御好意についつい甘えてしまったおかげでフラフラになってしまった。この大人しい性格はどこで損をするか分からない。(^^ゞ 

山頂へは左から巻くようになっている。左下に見えるのが三ノ沢カールと呼ばれるものか?シナノキンバイなどが咲いている。山頂直下は小さな花園のようだ。チングルマやアオノツガザクラ、ハクサンイチゲやコイワカガミなどが咲いている。
山頂には4~5人の方が休まれていた。後遠くに宝剣岳がそびえている。だんだんとガスが沸いてきたようで、御嶽山もすっかり隠れてしまった。夏場のいい時は短いものである。

そのうちどやどやと団体さんが到着したので、急いで近くにいた人にツーショットを撮ってもらう。静かな山頂が一気に賑やかになる。(^_^;)
団体さんは少し休憩しただけですぐに下りて行ってくれた。まるで大型ハリケーンが過ぎ去ったみたいである。

みれさんが、三角点の近くの岩から展望を見ていたと思ったら・・寝ていた(笑) いや、今流行りの岩盤浴か?(笑) まあ、とにかくどこでもよく寝れる人である。でも、このくらいの神経を持っていないと山なんかやってられないのもまた事実である。・・だから私はいつも辛いのよ。。\(`o'")
ゆっくりと休憩し、また分枝に戻る。同じ分だけ登り返さなければならない。途中にケルンがあったのには気が付かなかった。・・行きは道を外していたから。。(^^ゞ

みれさんが休まずにどんどん進む(速~い) 団体さんがちょうど休憩をしてくれたので助かる。(^^ゞ

分枝に戻ると、辺り一面はガスの世界である。ちょうどいい時間なので、ここで昼食を取る事にする。陽が当らないのでじっとしていると寒くなってくる。シェルを着込むが、ガスを持ってくれば良かったと・・ちと後悔である。
ガスが次第に濃くなってくる。いよいよ宝剣岳に登る。丸印に注意しながら、時には鎖に摑まりながら慎重に進む。4年前の記憶があまりない。(^^ゞ 岩の間に咲くチシマギキョウが可憐である。

途中でいくつかのパーティが下りてくる。かなり待たされてしまうのは別にいいのだが、小学生ぐらいの小さな子供(女の子もいた)がいるのにはビックリである。皆さん、軽装だ。親らしき人が一生懸命に指示をしているが、子供は少しビビっているのが分かる。ジャングルジムを上り下りするのとは訳が違うしねぇ。可愛そうな気がした。

ロープウェイで一般人も簡単にここへは来れるが、間違いなくここは3000M近い高山なのである。東西の斜面は断崖絶壁、ましてや過去にも事故の多い場所だ。一つ間違えれば命に関わる大事故になってしまう。夏山の午後の大気は特に不安定である(すでにガスってきている) 途中でもし雷雨なんかにあったらどうするのか?岩が濡れれば危険度は数倍に跳ね上がってしまう。決して偉そうな事を言える人間ではないのだが、もう少し真剣に考えてほしいと思う。商売なのは分かるが、その辺の事を駅やロープウェイ内でもっときちんと説明すべきだと思う。・・と、まれに真面目に考える時もある。(^^ゞ
宝剣岳の山頂。以前、立たなかったこの岩の上に、どうしても今回は立たなければならない。

まず最初にみれさんが上りたいと言うので、仕方なしに譲ってあげる(ウソ(^^ゞ) 写真でも分かるのだが、右後に足がかけられる僅かな段がある(左横の段の下は絶壁で無理) まずここに上り、手で上の岩角を掴み、体を持ち上げるようにして上がる。ポーズはワンパターンだがおめでとう! 

私の場合もすんなりと上がれたが、問題は下りる時である。下りるのは上る時より難しい。段が見えないうえに足がなかなか届かない。真後ろの下に小さな祠があり、その屋根に足を乗せるとうまくいきそうだが・・後からの祟りが怖い。こんなとこでも足の長さが影響するとは夢にも思っていなかった。(^_^;) ズルズルと滑りながら・・どうにか下りる事ができた。(^^ゞ 立てたのも、ガスで高度感が分からなかったというのが良かったかもしれない。

私達の刺激を受けてか・・見ていたカップルの男性がチャレンジする。私より遥かに若いし、だいたい足の長さが違う。見ていても全然面白くない(苦笑) もしその相方の女性が上がりたければ、下からお尻でも持ち上げて手助けしてあげようと内心思っていたが・・やはり夢に終わってしまった。私の人生はいつも厳しい。f(^-^;
山頂から下りる途中、また鎖場でお年寄りが苦労している。足が少し悪そうで見るからに危なかしそうである。ストックを手首にぶら下げている。ストックは邪魔だけでなく、危ないので仕舞うか置いてこなければならない。どうにか通過できたので良かったが、見てる方もヒヤヒヤである。

宝剣山荘に着くがガスだらけである。予定では伊那前岳にも足を延ばしたかったのだが、こんな状態では行っても仕方がない。それよりも、千畳敷から帰りのロープウェイの整理券を配っているアナウンスが聞こえてくる。すでに渋滞が始まったようだ。私達も少し早いが心配になり、もう下りる事にした。

乗越浄土からのの下山道は、行きとはまた違った花が楽しませてくれる。タカネグンナイフウロやタカネトリカブト、クルマユリなど・・

下っている途中でまたもや子供達が上がってくる。赤ちゃんを抱きかかえた人まで・・(^_^;) 別にもういいですけど、ザックを背負って登山の格好をしているこちらがバカらしくなってくる。
駅に着くと多くの人でごった返している。整理券を受け取ると・・ギョヘェー!何と2時間待ち!「こんなん初めてやー!」と、ガックリと肩を落とすみれさん。

いくらなんでも2時間は長い。外にいるとだんだん寒くなってくるし、かといって室内はいっぱいである。「アイスクリームが食べたい!たこ焼き!スルメも!」 鬱憤を食欲で紛らわそうとするが・・「やっぱ太るしやめとく」(もう少し太った方がいいと思うが?) 換気扇の下にいると暖かく、調理しているいろいろな匂いがしてくる。「これで食べた気になれるわー!」(笑) そのうち疲れてか・・ザックに腰を下ろして眠り出す。。今日は登山にではなく、何度も呆れ返る事に体力をかなり消耗したのだろう(微笑)

やっと時間が来てロープウェイに乗り込み・・しらび平へ!待ち時間なしでバスに乗れて駐車場に戻る。混雑していると思っていたこまくさの湯も案外空いていた。さっぱり汗と疲れを流し、黄昏時の高速に乗る。


この夏、みれさんのおかげでやっとアルプスに行く事ができた。気になっていた花の三ノ沢岳、宝剣岳の先にも上がれて満足である。いろいろとあったけれど、今となってはそれも良き思い出である。こうして天気に恵まれたのも認めたくはないが、やはりみれさんのおかげだ。感謝♪
 <休憩を含む行程時間>
 菅の台駐車場(6時過ぎ発) → しらび平 →千畳敷駅(7時28分) → 極楽平(8時02分) → 三ノ沢岳分枝(8時18分)
 → 三ノ沢岳(10時00分~10時40分) → 三ノ沢岳分枝(12時10分~45分) → 宝剣岳(13時20分)
 → 宝剣山荘(13時44分) → 千畳敷駅14時30分頃) → 菅の台駐車場(17時30分頃)
 
 <所在地>
 中央アルプス


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